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ニッカン蹴球倶楽部コラム

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2005年12月12日

湾岸はサッカー観戦天国! でも空席が目立つ理由:海島 健

 信じられないかもしれないが、湾岸諸国やその周辺諸国では国内リーグのみならず、五輪予選や国際Aマ?チでさえタダで見られることがある。お金を払う場合でも諸物価に比べ割安感が強い。

 ホームの応援をした場合の例を挙げてみよう。昨年のW杯1次予選は、マスカットでのオマーン−日本が0・5オマーン・リアル(約150円)、テヘランでのイラン−ラオスが5000イラン・リアル(約65円)、アテネ五輪最終予選UAEラウンドでは、いい席が20ディルハム(約600円)、一般の席が10ディルハム(300円)といった感じである。先月行われたUAE−ブラジルやカタール−アルゼンチンとかいったカードはもちろん例外だが、筆者の経験では600円相当の現地通貨を懐にしていけば十分という感じである。

 びっくりなのは、無料の試合だろう。アマチュアのバーレーンリーグがタダなのは当然かもしれないが、プロのカタールリーグも観客席はフリーパス。バーレーンのW杯最終予選だって、日本戦もウズベキスタン戦も、先日のトリニダード・トバゴ戦でさえ無料開放!! サッカー協会が音頭を取って「タダなのはもちろん、来れば入り口でチケットがもらえてくじ引きまでありますので、応援しましょう」と広告する??とまである。スタジアムに行ってサッカーを見るのが好きな人にとっては素晴らしい環境だ。日本人としてアウエーの席に入る時は、特別料金20米ドル〜55米ドル(約2400円〜約6600円)になってしまうが、希望すれば、とにかく切符が手に入るというのは恵まれているのではないだろうか。

 そうなると心配なのが「席はあるのか?」ということになるのだが、ほとんどの場合、杞憂(きゆう)に終わる。70分前くらいにスタジアム入りすればほとんど問題ない。日韓W杯最終予選バーレーン−サウジアラビアが2時間前くらいに満席になったのが逆に今でも印象に残っているほどだ。

 こういった天国のような状況にありながら、お客のあまり入っていない試合をよく見かける。国内リーグや親善試合に多く、W杯1次予選でも相手がかなり格下だとそうなる。気軽にサッカー観戦できるのはありがたいことこの上ないが、どうしてこうなのだろうか。
 まず大前提として湾岸は全般的に人口希薄地帯だということがあるだろう。「超大国」サウジアラビアでさえあの広大な国土(約215万平方キロ=日本の約5・8倍)に外国人を含め2500万人(日本のおよそ5分の1)。他の国にいたっては400万〜70万人なのだから。
 また中東の中でも比較的豊かな地域である湾岸の人々は、スタジアムで暑さや寒さ(今のこの時期、それなりに寒いのです)に耐え、砂ぼこりなどにまみれて観戦するのを好まない傾向がある。「エアコンの効いた室内でお茶でも飲みながらのほうが快適だし、トラブルにも巻き込まれないでしょう」と言う。スタジアムから車で10分の喫茶店でシーシャ(水タバコ)片手にそこで行われている試合を見ているのである。

 「スタジアムには大型ディスプレーがないから、1回見逃すともう何が起こったか確認するすべもないし、あのTVの解説抜きじゃ今ひとつなんですよ」と言う友人もいる。確かにこの地域の経済レベルを考えても、あってもよさそうなのに大型ディスプレーって湾岸ではあまり見かけない。
 時にはがらがらのスタジアムでするガルフの蹴球観戦だが、それでも生サッカーの魅力にそれほど変わりはない。前売りも、ダフ屋もいないサッカー観戦の原風景がここにはある。観戦天国は??りがたいことだが、12月から1月にかけてのこの「寒い季節」もうちょっと入ってくれないと寒々しい。それに普段はすいているのに大一番だけ観客が殺到して雰囲気ががらりと変わるっていうのも選手にはかわいそうな気がしますが。

海島 健(うみしまけん/バーレーン大学講師)
 1965年、東京生まれ。一橋大学社会学部卒、97年よりバーレーン在住。98年バーレーンでのガルフ杯のころからバーレーンの試合を見続けている。湾岸の弱小国の時代から追いかけているだけに、06年W杯ドイツ大会の最終予選の組み合わせ(日本とバーレーンが同組)には感慨ひとしおだった。現在はバーレーン大学で日本語の講師を務めており、蹴球倶楽部では中近東のサッカー情報を伝える。

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