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西村幸祐コラム

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2006年06月16日

アジアのサッカーに未来はあるか…脱亜論と日本の立ち位置

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 14日にH組のチュニジア-サウジアラビア戦が行われ、アジアから出場の4カ国がすべて大会に登場した。予想に反してサウジアラビアが一番いいサッカーをしたのだが、<いいサッカー>という意味は、レベルが高いという意味でなく、「らしさを十分引き出したサッカーを展開した」ということに過ぎない。

 今大会、前評判通りのプレーを見せるチェコの<いいサッカー>とは、次元が違う「いいサッカー」だ。それがそのまま、世界とアジアとの差を表している。

 サウジは期待のFWアルアンバルがチュニジア戦直前の練習で故障し、W杯出場が絶望となった。チュニジア戦の美しいカウンターからの逆転ゴールは、投入されたばかりのベテラン、アルジャバーのゴールだが、彼もフル出場は難しく、決勝トーナメント進出は容易ではない。

 韓国は勝ち点3を挙げたものの、決していい出来ではなかった。大会に入ってからの監督辞任騒動のゴタゴタで、チームが混乱しているトーゴが退場者を1人出してから、何とか逆転した苦しい試合だった。ただ、その中でMF朴智星(パク・チソン)だけはゲームの起点となる好プレーを随所に見せていた。

 イランはFWダエイの衰えは隠しようがなく、メキシコに1-3と惨敗した。ただ、MFカリミから何度も質の高いパスが供給され、イランの実力の程を見せてくれた。メキシコが上手(うわて)だったのだ。皮肉なことに、アジアで最も実力のある、質の高いサッカーができるイランと日本が、ともに1試合を終えて勝ち点0、得失点差-2なのである。

 さて、わが日本は初戦で痛い星を落とした。“カイザースラウテルンの惨劇”と言える試合だったが、これまで日本が戦ったW杯全8試合で最悪の試合だった。質の高いサッカーができるからといって必ずしも勝てないのがサッカーなのだが、この試合は酷すぎた。考え得る最悪の試合をやってくれた。リードを守りきれなかったこと。追加点を取るのか、守りに徹するのか、選手間の意思統一ができていなかったのは監督に大きな責任がある。

 1-0とリードした後半に追加点を挙げられなかったことも敗因の1つだが、同点とされた後、急激に運動量が落ち、DFラインと中盤の連係が崩壊したのはメンタル面の問題もありそうだ。現浦和レッズ監督、元ドイツ代表DFのブッフバルトに浦和の現役時代にインタビューした時、彼はこんなことを言っていた。「Jリーグで感じるのは、日本人はすぐあきらめるということ。しかし、重要なのは試合終了の笛が吹かれるまで、絶対にあきらめてはいけないということだ。試合に負けた後、悔しそうにしていないことにも驚いた」

 こういったメンタル面を補うのも監督の仕事だし、運動量とパフォーマンスが明らかに低下した中村を下げなかったことや細かい采配への指摘は無限にあるはずだ。だが、これまで4年間ジーコはずっとそうやって来たのだし、「規律の中の自由」でなく「自由の中の規律」がジーコのサッカーなのだから、日本人のあるがままの実力が試されているのが、今回のW杯なのだと思うしかない。

 韓国はトーゴに勝ったことで、7回目の出場で他国開催のW杯で初めて勝利を挙げることができた。この勝利に貢献したのはマンチェスターUの朴智星だが、皮肉なことに朴智星は、韓国のサッカー環境から生まれた選手でなく、Jリーグのお陰で成長できた選手なのだ。身長が足らず韓国で大学進学を諦め、韓国のスポーツエリート養成システムから弾き出された選手だったからだ。19歳で日本に渡り、京都パープルサンガで三浦知良を慕い、京都時代に多くの日本人サポーターから愛された選手だった。

 日本も今大会で勝利を挙げれば、自国以外開催でのW杯初勝利となるが、日韓両国とも1次リーグを抜けるのは難しい状況だ。もちろん、イラン、サウジもそれ以上に難しい状況なのだ。もし、アジア4カ国全部が決勝トーナメント進出を阻まれれば、2010年南アフリカ大会のアジア枠は確実に減らされると思う。2カ国か、2カ国+他地域とのプレーオフ1カ国ということになるだろう。南アフリカ大会予選はオーストラリアもアジアになるので、W杯本大会出場がより熾(し)烈になって来る。サウジやイランが見せたように、実力をそのまま遺憾なく発揮できる「らしいサッカー」を、日本が見せられなければ、世界のサッカー地図でアジアの面積がますます狭くなってしまうのだ。

 日本は初戦をこれ以上考えられない、最悪の形で終えてしまったのだから、選手も監督も開き直るしかない。
 いまジーコ監督責任論が日本メディアで大手をふっているが、ジーコ批判の急先鋒の評論家の1人が、9年前のフランス大会予選で、加茂監督批判を繰り広げながら、ジーコの監督就任を熱心に説いていたことを失笑するのは私だけであろうか? 選手も監督も、1戦1戦、思い通りのサッカーを見せてほしい。

※写真はオーストラリア戦で3点目を奪われ天を仰ぐ中田(撮影・宇治久裕)

西村幸祐(にしむら・こうゆう)
 1952年(昭和27年)東京生まれ。慶應義塾大学文学部哲学科中退。在学中に第6次『三田文学』の編集を担当、80年代後半から主にスポーツをテーマに作家、ジャーナリストとしての活動を開始した。93年のW杯予選からサッカーの取材も開始。02年W杯日韓大会取材後は、拉致問題、歴史問題などスポーツ以外の分野にも活動を広げている。著書は「ホンダ・イン・ザ・レース」(93年・講談社)、「八咫烏(ヤタガラス)の軌跡」(02年・出版芸術社)など多数。新著は「反日の超克」(PHP研究所)。
 ホームページアドレスはhttp://nishimura.trycomp.net

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