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西村幸祐コラム

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2006年06月28日

サッカーから見える韓国・・・汝よ、隣人を愛せるか?

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 韓国の1次リーグ敗退が最終戦までもつれたのは、サッカーの神の悪戯だったに違いない。それにしても酷(ひど)い悪戯をするものだ。

 もし、万が一彼らが1次リーグを突破したら、「また騒がしくなるな」と感じていた日本人はいるはずだ。そう、4年前のあの騒ぎである。朝のテレビのワイドショーで「テーハ・ミング」なんて他国の応援の練習までやっていた、まるで「韓国の応援をしない日本人は間違っている」とでも言わんばかりの報道が繰り返されたかもしれなかったからだ。今回のW杯でも、なぜ、日本メディアは韓国戦を客観的に中継できないのかと思う。半分冗談だが「日本メディアには韓国に肩入れしないといけない放送コードでもあるのだろうか」などと思ってしまう。

 特にフランス戦、スイス戦のNHKの中継には釈然としないものが残った。フランス戦ではビエラのノーゴールと判定されたヘディングシュートに言及はなく、スイス戦では一見オフサイドと疑わしいプレーのリプレーを何度も繰り返すのだが、韓国DFの足に当ってボールがスルーパスのようになったことについて言及がなかったのは、単なる偶然なのだろうか。

 もう1つ、驚いたことがある。日本の某テレビがニュース番組で決勝トーナメント1回戦のイタリア対オーストラリア戦を振り返り「4年前のイタリアは韓国戦でこんな不公平な判定に泣かされていた」と放送したのだ。そして、本来PKとなるプレーをシミュレーションと判定され2枚目のイエローで退場となったトッティが、今回はPKを決めたことに言及した。この局は4年前に「テーハ・ミング」の掛け声の練習をしていたが、4年前の韓国対イタリア戦の後で、なぜ、今回のような客観的なコメントがなかったのだろうか?

 相変わらずリアルタイムで現在の韓国事情が報道されないのは、結局4年前と変わっていないということかもしれない。不思議なのは、常日頃、近隣諸国への関心を謳(うた)い上げるメディアほど、本当のリアルな近隣諸国の実態を伝えないことが多い。だが、日本メディアが報じなくても、今やインターネットで韓国、中国のメディアが何を伝えるかが瞬時に分かってしまう。

 日本が初戦のオーストラリア戦で大敗した6月12日の夜の出来事を、盧武鉉政権を誕生させたことで有名になったネットメディア「オーマイニュース」がこう伝えていた。
 「試合の結果よりもさらに面白かったのは市民たちの反応だった。0-1でオーストラリアが先行されながらミスをする度に、まるで韓国チームがミスを犯したように切ないため息が漏れた。そしてケーヒルの同点ゴールが後半39分に決まると、韓国チームがゴールを入れたかのようにアパートから割れんばかりの歓喜の声が溢(あふ)れた。韓国チームではない他国の試合に市民がこのような反応を見せるのは初めて見る。オーストラリアのゴールが入る度にアパートは大騒ぎになった。理由は何だろうか? ヒディンクは韓国の英雄? または日本が韓国の宿敵だから? 日本と独島(竹島のこと)を巡りEEZ(排他的経済水域)を再設定する為の会議が行われているからなのか? そんな理由はなかっただろうか・・・」。

 少なくとも、韓国でこんな報道があったことを知る日本人と、知らない日本人の間では、対韓国認識が大きく異なってくる。近隣諸国が大切ならば、客観的な多くの情報が日本にもたらさせれなければならないのだが、現実はそうではない。隣人はいったいどんな考えをしているのかという正確な情報がなければ、正しく隣人を見ることもできす、うまく付き合っていくこともできない。
 日本対オーストラリア戦の視聴率は日本では、関東地区で49・0%だったが、韓国ではそれを上回る52・9%にも及んでいた。

 フランス戦で韓国は1-1で引き分けたが、例のビエラの幻のゴールを巡って大騒ぎになっていた。フランス代表のドメネク監督は、試合後の記者会見で「フランスはこの日、ゴールを2本決めた。問題は主審が1ゴールしか認めなかったということだ」と不満を表した。 その時、韓国メディアが一斉に主張したのは、韓国サッカー協会幹部の「試合後文句を言うのはスポーツマンらしくない」というコメントだった。
 韓国のネット上では3次元解析されたという触れ込みで、ノーゴールを証明する捏造写真まで現れ、それをまたメディアが報道していたのだ。いわゆる<ネチズン>(※1)の“活躍”である。<ネチズン>は、政治的課題になれば、たとえば教科書問題、竹島問題で、膨大なメール攻撃を世界中の関係機関、政府機関に仕掛けることでも知られているが、それはサッカーでも同じだった。

 さて、韓国対スイス戦は、決勝トーナメント進出を賭けた試合だったせいもあり、午前4時からの中継にもかかわらず視聴率は52・9%、例の判定があった時の瞬間最大視聴率は74・7%に達していた。MBCのゲスト解説者だった車ドゥリ(フランクフルト)は、「まるで話になりません。これは詐欺です」と口走り、試合後悔し泣きする選手の映像に、「サッカーは今日…死んだ」というテロップを流したのだ。冷静で客観的なコメントをしたSBSの解説者(※2)や、「判定も試合の一部」とコメントした朴智星(パク・チソン)はネット上で<ネチズン>に攻撃されてしまった。
 さらに<ネチズン>の怒りは燃え盛り、24日の夕方に韓国YAHOOに「500万通の抗議メールを送れば、再試合が行われる」というウソの書込みが行われると、<ネチズン>が一斉にFIFAのサイトを攻撃し始めた。その結果、25日にFIFAは、「組織化された攻撃が韓国から行われているので、ウェブサイトを保護するために韓国からのアクセスを遮断する」という広報部長のコメントを出さざるを得なくなってしまった。

 フランス戦後、「試合後に文句を言うのはスポーツマンらしくない」と言っていた韓国メディアも、スイス戦後は、「主審の釈然としない判定で夢が絶たれた」、「韓国代表、疑惑の判定に泣く」と見出しを付けた。試合会場では汚物を投げつけるサポーターも現れ「審判を除名すべきだ、韓国スターたち、不当審判をいっせいに非難」という芸能人の反応を伝える報道と続き、ついにはスイス大使館に爆破予告した人物まで出現し、逮捕されるという事態にまで発展した。

 4年前のW杯4位という<成績>から韓国のナショナリズムは危険水位に達したのだが、それがそのまま反日・反米政権誕生を<ネチズン>が後押しする環境にしてしまった。その基本が他者(韓国にとっての隣国、日本)の意見を徹底的に排除する歴史認識であると私は思う。日本と韓国との軋轢(あつれき)である歴史認識問題、領土問題も、W杯の審判問題と全く同じ構造だと私には思えてならない。

※1 ネチズン・・・ネットを利用する市民という造語で元々米国でできた言葉。世界中で使用するのは韓国だけである。盧武鉉政権誕生に寄与したのも<ネチズン>と言われている。
※2 SBS・・・韓国ではW杯や五輪は国営放送であるKBS、民放であるSBS、MBCの全局が中継するのが普通である。W杯視聴率は3局の合計の数字。

※写真はスイス戦での判定をめぐり、主審に抗議する韓国の選手たち(ロイター)

西村幸祐(にしむら・こうゆう)
 1952年(昭和27年)東京生まれ。慶應義塾大学文学部哲学科中退。在学中に第6次『三田文学』の編集を担当、80年代後半から主にスポーツをテーマに作家、ジャーナリストとしての活動を開始した。93年のW杯予選からサッカーの取材も開始。02年W杯日韓大会取材後は、拉致問題、歴史問題などスポーツ以外の分野にも活動を広げている。著書は「ホンダ・イン・ザ・レース」(93年・講談社)、「八咫烏(ヤタガラス)の軌跡」(02年・出版芸術社)など多数。新著は「反日の超克」(PHP研究所)。
 ホームページアドレスはhttp://nishimura.trycomp.net

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