2006年06月12日
韓国の攻撃的システムに不安発生?

いよいよ、決着をつける時がきた。
9日に幕を開けたW杯、12日、13日と続けて日本、韓国が登場する。日本は1次リーグを突破し、韓国の成績を上回ったならば、4年前の複雑な思いを晴らすことができる。喜びは倍増、いやいや2乗になる。
韓国代表の23人の構成は、(1)前回大会経験者10人 (2)Jリーグを含む海外組7人 (3)アテネ五輪組5人 (4)平均年齢26・0歳。
ちなみに日本代表は(1)11人 (2)6人 (3)2人 (4)27・5歳となっている。
韓国は前回大会との比較は避けられない。あれだけ目立つ成績を残したのだ。さらに10人の前大会メンバーが残り、監督が同じオランダ人で継承されている。もっとも、前回大会から洪明甫、柳想鉄ら主力のベテラン4人が引退したように、チームの表情は豹変している。
システムが3-4-3から4-3-3へと変ったことは、ここまでも紹介してきた。確かに、今年の1月、2月は新たなポジションを試す刺激でチームは高みへと向かいつつあった。ところが、大会直前になってその勢いに少しかげりが見えている。5月27日からスコットランド・グラスゴーで合宿を続け、6日にドイツ・ケルンに入った。スコットランドでは、中村俊輔が所属するセルティックの宿敵、レンジャースのホームグラウンドでトレーニングを積んだ。アドフォカート監督は、98年から02年までこのチームで3回のリーグ優勝を果たすなど、全盛期を過ごした思い出の地だ。
だが、合宿の成果が疑問視されている。
6月2日のノルウェー戦では0-0のスコアレスドロー。アドフォカート監督はは試合後に「テストに過ぎない。サブの選手にはいい実戦経験になった。次戦が重要」と話した。ところが、ガーナ戦(4日)では1-3の敗戦を喫してしまった。
チームは欧州入りした後、スコットランド-ノルウェー-スコットランド-ケルンと移動を続けている。86年大会から6回連続出場の経験があるアジアのサッカー大国は、試合前の調整方法のノウハウを有している。大会前2週間から現地入りし、選手が飽きてしまった経験があり、逆に5-6日前に入り、時差の調整に苦しんだこともある。今回、ノルウェー戦は招待されてのゲームだったという。適度に移動しながら、選手に新鮮な空気を送り込む考えだったのだろう。
しかし、試合後ミックスゾーンで取材に応じたMFの選手が「雰囲気が盛り上がってこない」と認めるほど、チーム状態が芳しくない。移動の多さは、選手にどのような影響を与えるか。
韓国に比べ、日本はアジアチャンピオンとして臨んだコンフェデ杯と今年2月のボスニア・ヘルツェコビナ戦でドイツの地を踏んだ。ボンには5月26日に到着、初戦オーストラリア戦の17日前から入っている。移動を続けるフレッシュさが勝るか、慣れがいい結果を生むのか、見届けよう。
ノルウェー戦ではまた、MFに負傷者欠場者が続出した。レギュラーが予想されるボランチ李乙容(イ・ウリョン)、金南一(キム・ナミル)、トップ下の朴智星(パク・チソン)が欠場。ボランチでレギュラーを脅かす李浩(イ・ホ)までもが出場を見送った。
4年前のチームは、大会半年前から綿密な体力トレーニングを行い、大会には左サイドの李栄杓(イ・ヨンピョ)を除いたほぼ全員がベスト・コンディションで臨んだ。アドフォカート監督は、体力トレーニングには大きなこだわりは見せなかった。「選手はプロ。自分のチームでやるべきことだ」と言う。自国開催のメンツもあり、大会半年前から、しっかりとした準備期間を与えられたヒディンク監督と、今回のチームはこの点でも大きく違う。
負傷者の続出は、はからずも1人の選手の存在をクローズアップさせた。攻撃的MFに入る朴智星(パク・チソン)だ。先に述べたMFの負傷により、ノルウェー戦でアドフォカート監督は、MFの布陣を三角形からワン・ボランチの逆三角形に変更。主にセンターバック要員としてメンバー入りした金相植(キム・サンシク)をワンボランチに据え、攻撃的MFには若手の金斗■(キム・ドゥヒョン)、白智勲(ぺク・チフン)を配した。2人はともに小柄でスキルフルなタイプだ。
攻撃的MFの2人は、前線へのボール循環のなかで、流れを詰まらせるマイナス作用しかもたらさなかった。3人のFWに対し、後方で2人が攻撃を操るシステムにあって、ともに持ち味を失った。FWとの距離感が全くつかめず、両サイドDFの攻撃参加するスペースも消してしまう。相手のラインが間延びした70分過ぎからようやく2人のパス交換からチャンスが生まれたに過ぎなかった。4-3-3システムでのワン・ボランチ+2人の攻撃的MFの陣形(逆三角形)の難しさを露呈した。
ダブル・ボランチ+1人の攻撃的MF(三角形)で、攻撃的MFに広いスペースを与え、3人のFWを操らせる布陣が、より有効的だろう。ダブル・ボランチが4バックの空いたスペースをカバーできる点も有利だ。この場合、朴智星が攻撃の大きなポイントとなる。4-3-3の看板、両サイドがワイドに開いた攻撃陣が機能することは、チームにとっての生命線だ。このラインを絶たれたり、朴が欠場すると、ノルウェー戦のような苦しい試合展開になるだろう。
02年のヒディンク監督のチームでは、ゲームメーカータイプの選手を置くことは、最後の手段に過ぎなかった。最終エントリーに残った23人のうち、尹晶煥(ユン・ジョンファン)のみがこのタイプだったが、大会を通して1分の出場も与えられなかった。綿密なトレーニングプランでコンディションを保った選手が1人に頼ることなくゲームを作っていったのが、前回のチームの特長のひとつだった。今回は、朴智星のピースが攻撃的MFにはまるかどうかで、大きく状況が変わるチームが仕上がったように思う。
韓国は大会5日目、6月13日に登場し、フランクフルトでトーゴと対戦する。
※■は火へんに玄
写真はオーストラリア戦を翌日に控えたジーコ監督。日本は韓国の成績を上回れるか?
- 吉崎エイジーニョ
- 本名吉崎英治。1974年生まれ。大阪外大朝鮮語科卒。フリーランスのサッカーライターとして「Number」「サッカーマガジン」などに執筆する。
2002年、日刊スポーツの入社試験を受け、最終面接で落ちた過去を持つ。だからこそ、オファーをくれたこのサイトのために頑張る。
2005年9月に渡独。W杯開催国で先乗り取材を続ける。個人ブログ: http://ameblo.jp/eijinho/


