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吉崎エイジーニョコラム『ドイツ先乗り!エイジーニョ!!』

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2006年07月 5日

今しかできない! ジーコ時代の反省

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 ドイツがイタリアに負けた。4日の準決勝の後、ここケルンはシーンと静けさが漂い、時折怒号が聞こえた。

 ドイツ人は一般的にイタリア人を「経済的には負けないが、なんか洒落(シャレ)てて気になるヤツら」と思っている。明るい太陽と海にジェラシーも感じている。
 そんな相手に、世界中が注目する中で、負けた。ライバル関係とは、こうやって刻まれていくんだと感じる。
 
 大会のことはさておき、日本では、中田ヒデの話題で持ちきりなのだとか。「代表新監督ポロリ事件」といい、まったく忙しいもんだ。ジーコ時代の反省なんて、さらっと忘れられてしまうんだろう。「大会が終わって総括を」っていうムードになるんだろうか。
 
 いやいや、9日以降にオシム新代表監督が正式就任したら、またひと盛り上がりあるだろう。ならばせめて、大会期間中にできることをやらなければ。はらわたが煮え繰り返る点を、ほじくり返さなければならない。
 今回の結果が、ライバル韓国を下回ったという事実は認めなければなるまい。両国とも1次リーグ敗退だった。結果が同じであれば、比較はナンセンスでもある。それでも、数字はシビアに両国の差を示している。
 
 日本 1分2敗    勝ち点1 得点2 失点7
 韓国 1勝1分1敗  勝ち点4 得点3 失点4
 
 02年の「4強神話」のあと、後遺症に苦しんだ韓国サッカー。しかし、06年に入った頃からまとまりを見せた。アドフォカート監督(05年9月就任)が導入した、4-3-3システムが一定の成果を見せ始めていたのだ。06年1月から5月にかけてのチームは首尾よく強化が進んでいた。年始から1カ月以上もの合宿を敢行するなどし、7勝2分3敗(クラブチームとの対戦含む)の好成績を挙げた。この感覚こそが、今回の韓国の強みだった。前回大会で経験した「突貫工事」でのチームづくりの感覚を、選手・協会・メディア・サポーターが共有していた。そこまでいかにドタバタを繰り返そうとも、大会直前で帳尻を合せる。ヒディンク監督時代から引き継いだ財産でもある。
 
 02年大会ではヒディンクが大会1年半前に就任し、急ピッチでのチーム作りを進めた。01年8月、チェコに0-5の大敗を喫したチームは、大会直前、イングランド、フランスとのテストマッチでようやく仕上がっていった。対戦成績は1分1敗だったが、選手を含めた関係者は口をそろえて「強豪国といい勝負をした。あそこで初めて自信が持てた」と言う。
 
 この前例と照らし合わせ、先月の11日に「今回の韓国は厳しい戦いを強いられる」と予想したレポートを書いた。6月上旬の2試合のテストマッチでW杯不出場のノルウェーに引き分け、仮想トーゴのガーナに惨敗を喫した。ノルウェー戦後、あるMFの選手は「チーム状態が上向かない」と吐露した。主力のほとんどが、前回大会経験者であるチーム。この段階でチーム状態が1度落ちてしまうと、本大会でも苦戦を強いられると分析した。
 
 それでも韓国は、アジア勢最高の成績を挙げた。大会直前に仕上がり具合を下げたチームは、大会中にも「工事」を続けた。着工が遅れた分、変化を刺激とすることで、1次リーグの3戦を戦った。
 
 初戦のトーゴ戦、アドフォカートはそれまでこだわりを見せ続けた4-3-3を捨て、前回大会で使い慣れた3-4-3で臨んだ。1点をリードされ前半を折り返すと、これまでほとんど使ったことのない4-2-3-1に切り替え、FW安貞桓をトップ下の位置に投入。4トップともいえる陣形でなりふり構わずゴールをめざし、逆転勝ちを収めた。
 
 第2戦、第3戦でも1枚ずつ新しいカードが切られていった。フランス戦では後半からFWソル・ギヒョンが投入され、決勝ゴールにつながるセンタリングを上げる。スイス戦では、結果は出なかったものの左FWに新鋭の朴主永が起用された。
 そんな韓国に、02年大会に続いて上を行かれてしまった。大会前の4年間を通じ、日本の方が着実な準備を続けてきたのに、最終的には向こうが上回る。02年大会とそっくりの状況がまた今大会でも繰り返された。国民性の違いか? 選手の違いか? 結局は大会期間中に強いチームをつくった方が、勝ちなのだ。
 
 ジーコのチームは、ピークが少し早く来たのではないか。メディアは急かすことはなかったか。チームの「鮮度」の保ち方は、韓国との比較から出てくる、日本代表の新たな課題だ。 
 この類の記事をネット上で書くと、向こうから、よくこんな反応がある。
「『日本、韓国に学べ』『韓国がうらやましい』という記事が日本でアップされた」と言い出すのだ。

 どうぞ、好きなようにお書きください。

 自分が勝てば楽しいし、ライバルが負ければその喜びは増加する。ごく自然な感情だ。韓国がトーゴに勝った6月13日の深夜、韓国記者から電話がかかってきた。オーストラリア戦の逆転負けについて「『ドーハの悲劇』以来のショックか?」と聞いてきた。

 こういう類の悔しさは、しっかり記憶に刻んでいかなければならない。負けてできることは、それくらいしかないのだから。もっともっと言われてもいいし、勝てばこっちが言い返せばいい。
 
 ドイツ-イタリア戦の試合中、パブリック・ビューイングに訪れたドイツのサポーターはこんな歌を口ずさんでいた。「オーイタリア、おまえらピザでも運んでろ!!」
 遠慮なく言える関係の方が、実は平和だったりする。アジアではミサイルが飛んでくるんだから、たまったもんじゃない。

※写真はトーゴ戦の後半、ゴールを決め駆け回る韓国FW安貞桓(撮影・宇治久裕)

吉崎エイジーニョ
 本名吉崎英治。1974年生まれ。大阪外大朝鮮語科卒。フリーランスのサッカーライターとして「Number」「サッカーマガジン」などに執筆する。
 2002年、日刊スポーツの入社試験を受け、最終面接で落ちた過去を持つ。だからこそ、オファーをくれたこのサイトのために頑張る。
 2005年9月に渡独。W杯開催国で先乗り取材を続ける。個人ブログ: http://ameblo.jp/eijinho/

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