小野完全復活!敗戦日本で輝き/親善試合

- 後半16分、左サイドからセンタリングをあげるMF小野(撮影・蔦林史峰)
<国際親善試合・キリン杯:ブルガリア2-1日本>◇9日◇長居
MF小野伸二(26=浦和)が代表でも輝きを取り戻した。キリン杯初戦のブルガリア戦の後半16分から途中出場。安定したボールさばきで中盤でリズムを生み出すと、同25分からの3分間で立て続けに3度の好機を演出した。チームは後半ロスタイムに失点し、1-2で敗れたが、ジーコジャパンへ希望の光をもたらした。欧州組も加えた本番想定の先発メンバーの座はMF小笠原に奪われていたが、リーグ戦に続く活躍で奪回を強烈アピールした。
小野が感性を攻撃に注いだ。投入から約10分、タクトを振るうたびに、チャンスが生まれた。同25分には中央にドリブルで切れ込み、地をはうような左足シュート。強烈な一撃はGKが手に当てはじくのがやっと。同27分には柔らかなトラップから流れるように右足アウトサイドでスルーパスをDF三都主の足元に通す。極めつきは直後のプレー。右足でふわりと約30メートルの浮き球をDFラインの裏へ抜けたFW玉田に送った。3分間で3度の決定機は濃密だった。
「最初は前め(左MF)をやらせてもらえていたのでゴールを取りたいと思っていた」。代表での主な役回りはボランチ。だが過酷な中盤のレギュラー争いに生き残るためには2列目でも結果を残すことが必要だった。86分間出場し、2得点と活躍した7日の鹿島戦からわずか中1日で迎えた一戦。さすがに前日8日は疲労の色が濃かった。目を覆い隠すようなサングラスで大阪に降り立ち、ホテルでの別メニュー調整だった。だが、待ち望んだ機会に極上の輝きを放たないわけにはいかなかった。
すべては2月28日のボスニア・ヘルツェゴビナ戦で小笠原に奪われた先発の座を奪回するため。ジーコ監督に高評価された3月30日のエクアドル戦も「それ以上のものを見せないといけない」と甘えなかった。この日のプレーは文句のつけようがない内容だった。
クラブでも代表でも不振を極めていた時、弱さをのぞかせていた。エクアドル戦前に「状態は40%」と告白。試合後も「50~60%ぐらい」と微増にとどまった。自ら不振ぶりを告白し、ビデオで研究していることも明かした。天才らしからぬ苦労話を漏らしていた。
弱っている時も、他人を思いやった。3月末、右足第5中足骨骨折の柳沢に代表メンバーによる激励の色紙を贈ろうと呼び掛けたのは小野だった。同じ個所の同じケガに苦しんだことがあるからこそ痛みを分かち合えた。
だが己の弱みはもう見せない。左足首痛から自身初のCK弾で復活を遂げた4月26日のナビスコ杯福岡戦後。パフォーマンスの数字を問う質問に、顔をこわばらせて語気を強めた。「そういった質問には答えられません!」。凍り付いた会見場の空気に、前だけを見据える決意が漂っていた。
この日も最後に聞かれたのは調子について。だが本来の柔らかい笑顔を浮かべて言った。「もうそういうことは…。キリがないんでね」。張りつめた緊張感はない。もう吹っ切れていた。天才がその才能を存分に発揮できる舞台がドイツで待っている。【広重竜太郎】
[2006年5月10日8時42分 紙面から]
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