ジーコ監督ボール触らせない合宿スタート

- 大勢のファンが詰め駆ける中、4分間走をこなす、左から小野、駒野、巻
日本代表のジーコ監督(53)がW杯モードを演出した。チームは18日、国内最終合宿地のJヴィレッジ(福島県)で練習を開始。体調不良のMF小笠原や、FW高原ら一部欧州組を除く19人が参加した。ジーコ監督の考えで、選手のサッカーへの渇望を高めるため、ボールを一切使わせずに完全な体力強化トレーニングに徹した。一方で練習を通常通り完全公開し約3000人の観衆が集まったことで、高まる期待を選手に感じさせた。W杯の熱を帯びながら、最後の戦いへと向かう。
ジーコ監督がW杯へ、一手を打った。ピッチのどこにもボールが見当たらない。普段なら選手個々に任されている練習前のウオームアップや、フィジカルメニューの中にもボールを使った練習を取り入れる。だがこの日は午後練習で別メニュー調整だったGK土肥が使用した時以外は、一切持ち込ませなかった。選手の目の前には青々としたピッチが広がるだけ。午前、午後の2部練習で約3時間半、走り抜いた。初心に帰るかのように、ひたすら走り抜いた。
キリン杯の時からスタッフと話し合い、温めていたプランを実行に移した。ジーコ監督は「自分が(練習の指揮を)やることになったら答えるから」と話すにとどまったが、里内フィジカルコーチが代弁した。「選手はボールを使いたがるもの。蹴りたいという欲望、集中力を高めさせたかった。体の状態もばらつきがあったし『今日からW杯だよ』ということを知らせたかった」。確かな狙いが隠されていた。
MF遠藤が「陸上部みたい」と振り返るほど過酷なメニューだったが、ジーコ監督の思いは受け止めている。DF宮本主将は「(ボールに)触りたいという気持ちをため込んでということでしょう」と理解した。
国内最終合宿も就任後不変の方針で練習を公開した。4年前は違った。トルシエ前監督は直前合宿は非公開練習を貫き通し、選手がサポーターと触れ合えたのは限られた移動の時と試合会場だけ。地元開催のW杯にもかかわらず、ピッチ外のフィーバーぶりはテレビやインターネットを通じて知ることが多かった。
だがこの日は高まる熱を肌で感じた。約3000人の観衆が集まり、フェンス越しに「ヒデ(中田英)頑張って~」「中沢さん、ケガ(右まぶたの裂傷)大丈夫ですか~」と声を張り上げる姿があった。中田英は午前練習を終え、引き揚げる際に珍しく手を振って応え、午後練習ではフェンス際でのダッシュを披露。中沢も負傷を心配するファンにVサインを返した。選手、スタッフ、サポーターを「ファミリー」としてとらえるジーコ監督の思いは、この4年間で確実に伝わった。
練習前には約3分の短い訓示に思いを込めた。「やっとメンバーも決まり、1つのチームとしてW杯を戦う。今まで50~60人の選手が呼ばれてきたが、呼ばれなかった人のためにも頑張ろう」。W杯への熱い思いが、日本の活力になる。【広重竜太郎】
[2006年5月19日8時53分 紙面から]
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